大人のロックアルバム「LIFE IS GOOD」発売記念ライブ!

ギター・マガジン(リットーミュージック)の創刊30周年を記念し、『GUITAR MAGAZINE FESTIVAL』が5月1日、東京ドームシティホールにて行われた。
日本のギター・シーンとともに30年間歩んだギター・マガジンだけあって、出演ギタリストも超豪華。
午後3時の開演から9時半の終演まで、たっぷりとギターの魅力を味わわせてくれる、まさにギタリストのギタリストによるギタリストのためのフェスとなった。

photoまずは、チアリーダーたちがステージに登場、華やかなチアリーディングを見せてくれる。それに驚く間もなく、高中正義がフェスの先陣を切った。彼は創刊4号目となる81年3月号で表紙を務めたギタリストでもある。
1曲目の「ALONE」が始まった瞬間に、会場は高中ワールドに染め上げられた。
彼のギター・プレイには、熟練の職人技ときらめくアーティスト性が融合されており、それはギター・オリエンテッド・ミュージックのひとつの完成形だと言ってもいいと思う。
MCでは、昨年の“ギター・マガジンが選ぶギタリスト100人”に選ばれなかったことを自嘲気味に話す余裕も見せた。
また、終盤での遊び心と選曲は、心憎いとしか言いようがない。
ひとつは、「KALA」、「ホテル・カリフォルニア」、「パイプライン」、「ウォーク・ドント・ラン」の要所要所をメドレーつなげながら、代表曲「BLUE LAGOON」へとなだれ込んでいく趣向。
これで大団円かと思わせておいて、次に「YOU CAN NEVER COME TO THIS PLACE」〜「珊瑚礁の妖精」〜「獅子座流星群」〜「黒船」という圧巻のメドレーが待っていた。
このフェスにおいて高中は、あまりにも豪華なトップ・バッターだったと言っていいだろう。
また、「獅子座流星群」は、もし生きていたらその場にいたかもしれない、大村憲司に捧げた曲だということも付け加えておきたい。

photo二番手は、渡辺香津美&小沼ようすけのデュオ。アコースティック・ギターで、いきなりスーパー・ギター・トリオの「地中海の舞踏」にはやられた。聴かせどころを知り尽くした選曲と演奏だったと言えよう。
そのあとはエレキに持ち替えて、ジャムっぽい演奏で楽しませてくれる。
「フィール・ライク・メイキン・ラヴ」ではクリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラヴ」、ディープ・パープルの「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のリフまで飛び出す始末。
最後の「フリーダム・ジャズ・ダンス」で、小沼はファズ(?)+オクターヴァーというアグレッシヴでサイケなサウンドも聴かせてくれた。
ふたりの演奏には、がっぷりと正面から組み合いながらも親密さが滲み出ており、加えて師弟関係(師弟愛と言ってもいいかもしれない)を感じさせてくれたところも、非常に心地よかった。

次はダージリン。佐橋佳幸とDr.kyOnによるユニットだ。ギターとキーボードで、キッチュな味わいのあるインスト・ナンバーを聴かせてくれる。
ここでは、6曲中4曲にCharのバックを務める古田たかし(d)が参加し、より多彩な表情を演出した。
マルチ・プレイヤーであるDr.kyOnが唯一ギターを弾いたのが、ボ・ディドリーのジャングル・ビートを取り入れた「Tea for .3.2」。ここは彼らの最大の見せ場となった。

photo松原正樹×野呂一生は、今回が記念すべき初めての共演。日本のフュージョン界を代表する野呂と、フュージョン/スタジオ・シーンの第一人者である松原によるギター合戦は、すさまじくも美しかった。
テクニック、トーン、表現力、どれを取っても超一級のプレイが左右から怒涛のように押し寄せてくるこの圧倒感は、なかなか体験できるものではない。
ところで、日本のフュージョンというのは、欧米のジャズ・ロック/フュージョンの流れとはまた別の進化の仕方をしたように思える。大雑把に言うと、欧米のものには根幹にブラック・ミュージックがあるが、日本のものにはどこかにベンチャーズ的なギター・インストのルーツがあるような気がするのだ(意識的/無意識的は別にして)。そういう意味で、“日本のフュージョン”はわが国独自の音楽文化だと私は思っている。
だからこそ、それを形作ったこのふたり(もちろん、トップで登場した高中正義もそのひとりだが)による共演は、これぞ“ザ・ジャパニーズ・フュージョン”と言えそうな色合いに満ちたものでもあった。

photoそのあと渡辺香津美が再び登場し、渡辺香津美JAZZ回帰トリオのステージへと。
ちなみに渡辺は、ギター・マガジン創刊号である80年12月号で表紙を飾った記念すべきアーティストだ。2回用意されたステージは、その彼へのリスペクトの表れと思ってもいいだろう。
バックを務めたのは井上陽介(b)、則竹裕之(d)。完璧な、そして熱い演奏で渡辺を盛り立てた。
1曲目のバド・パウエルの「クレオパトラの夢」から、最後のジョン・コルトレーンの「インプレッションズ」まで、渡辺のプレイはとにかく上手い。
そして、時に優しく、時に荒々しく、時にクールに、時にはめをはずして、感情の襞みたいなものまでが伝わってくる。
ジャズに回帰したと言うよりも、渡辺香津美というギタリストの最もコアな部分に回帰した演奏だったのではないだろうか。

photoトリを務めたのはCharだ。
彼は昨年、影響を受けたミュージシャン/バンドのナンバーを独自解釈でリアレンジしたカヴァー集、『TRAD ROCK』シリーズ6作をリリースした。今回のライヴも、その内容を敷衍したものとなった。
ジャズ〜フュージョン勢が大勢を占めたこのフェスにおいて、Charの存在は、もうその存在だけでロックを、そしてロックならではのダイナミズムと、有無を言わさないかっこよさを、感じさせてくれるものだった。
1曲目の「サード・ストーン・フロム・ザ・サン」(ジミ・ヘンドリックス)が終わってすぐに、「(ずっと座っていると)エコノミー症候群になるので、座ったままでもいいですし、立ち上がってもいいですし、少し血を巡らしましょうか。こんなとこで死なれても困るんで」と言って、結果的に観客を総立ちにさせたのもCharらしかった。これも、彼の持つカリスマ性のなせる業だろう。
演奏したナンバーはジミ・ヘンドリックス関係、エリック・クラプトン関係、ベンチャーズ関係、ビートルズ関係でほとんどすべてだが、「Zig Zag Zone」(『PSYCHE II』に収録)と、最終曲の「からまわり」だけはオリジナル。
特に、「迷信」に基づいたジャムから入った「からまわり」のスリリングさは圧巻で、フェスではなくてCharのワンマン・ライヴかと思わせたほどの出来だった。
ただ、このテンションは最後の最後のこの1曲のみだった気がする。もちろん、前述のように、彼は“ロックの存在感と、Charというギタリストの存在感”をこの上ないほどに見せつけてくれたが、“ロックの存在感と、Charというギタリストの存在感”(と、圧倒的だった「からまわり」)以外には、心に残るものがなかったというのが正直なところだ。
それでも、“Charの演奏は最高だった”と言うファンもいるけれど、そういう声を聞くと、いや、それは本当のCharのすごさを知らないんじゃない? 逆にCharを馬鹿にしてるんじゃないの? なんて、つい嫌味のひとつも言いたくなるのである。

少々話がずれてしまったが、とにかくギターという楽器にここまでこだわったフェスもなかなかないだろう。
過去では『LIGHTNING BLUES GUITAR FES』、海外では『クロスロード・ギター・フェスティヴァル』ぐらいしか思い浮かばない。
出演者はもちろんのこと、観客もほとんどがギタリストという、ギターを愛する人間たちにとっては夢のような時間と空間が、そこには出現していた。

ありがとう、ギター・マガジン。
おめでとう、ギター・マガジン。

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